東京デジタルクライシス
脚本:冨岡淳広 演出:三塚雅人 作画監督:浅沼昭弘
★あらすじ
2020年。その年の夏、世界中がおかしくなった。
原因不明のネットワークトラブルが頻発し、混乱のただ中に巻き込まれた東京。
システムの異常に情報の流出、ついには交通管制にまで甚大な影響が及びはじめます。
サマーキャンプの準備をしていた小学五年生の少年、八神太一は
母と妹のヒカリが暴走する首都環状線の中に閉じ込められてしまったことを知ります。
後輩である泉光子郎のサポートを受けて状況を確かめに向かった太一は突然謎の現象に巻き込まれ、
ネットワーク空間の中にある世界「デジタルワールド」に飛び込んでしまいました。
そこで出会った謎の生命体・コロモンに太一が触れると、あっという間にアグモンへ進化。
言葉を話し、なぜか太一の名を知っているこの存在に驚く間もなく、今起こっている障害の数々が
そのアグモンと同じデジタルモンスター──デジモンによるものだと判明します。
暴走を続ける環状線を止めるため、太一はアグモンと共に謎のデジモン達を退治しようと試みます。
しかし最後に残った一体にデータが集中、比較にならない巨体を備えた怪物に進化しました。
このままでは間に合わないどころか、太一自身が危険に晒されてしまう状況です。
それでも向かってゆこうと試みる太一の傍らで、アグモンが膨大な輝きに包まれます。
みるみるうちに巨大化してゆくその姿は爆裂の戦闘竜、グレイモンへと進化しました。
圧倒的な戦闘力によって戦いは太一たちの勝利に終わり、環状線も無事に停止します。
ところが安堵する間もなく、今度は米軍のネットワークに大規模なデジモン反応が起こり……
★全体印象
完全新作の名の下に送り出されたデジモンアドベンチャー:、その第1話がついにオンエアされました。
クロスウォーズのときはテレ朝、アプモンでテレ東と右往左往してましたが、「デジアドといえばフジだろ」
と言わんばかりに引っ張り戻されたような形です。しかも無印と同じ朝9時という破格の待遇。
結果がどうなるかはともかく、力の入れっぷりがよくわかりますね。
内容としてはいきなり全員は出さず、太一組の活躍をガッツリと魅せる流れでした。
実のところ無印の1話はバトルとして見ると賑やかではあっても派手さはなく、グレイモンが出たのは
2話になってからでしたが、今回は1話からガンガン押して印象を掴んでゆく方策みたいですね。
加えて旧作の要素は残しつつ、物語としては完全に別物を目指すというその方向性も強く示されています。
これに関しては粗筋の時点で半分わかってはいたことですが、改めてハッキリ示されたというのは
決して悪い話ではないと思います。新規には比較的優しく、旧来ファンには新鮮さを提供できる構図だし。
いきなり東京編からやるようなものなんで、古いタイプの人間としてはちと心配なのですが…
しかしその一方で、新しい切り口からのスタートにかなり期待もしていたりします。
それに、太一たちがどこからどう始めようと面白いお話を作れるだけの地力があるキャラクターなのは
すでに間違いない事実ですし。うまく活かせさえすれば、ですが。
この新作は、旧作において途中からの要素だった「紋章」が最初から強く推されてるのがポイント。
デジヴァイスを介しパートナーを強化できると思しき描写もあり、ここでも違いが強調されてます。
作画も1話だけあって非常に力が入っており、見ごたえのあるバトルを楽しめました。
脚本は富岡淳広さん。ポケモン、イナズマイレブン、バトルスピリッツ、ダンボール戦機、ブレイブビーツ、
果てはヘボットに至るまで数々のキッズアニメのシリーズ構成を務めたベテラン中のベテランです。
ある意味では切り札といってもいい人かもしれません。ここにも力の入れっぷりが垣間見えます。
この人でダメなら仕方ないという背水の陣さえ見えてくる。
演出の三塚雅人さんは、本作のシリーズディレクターでもある方。
近年はプリキュアでの活躍が目立っていましたが、クロスウォーズにも参加しておりました。
個人的には初SD作でもある「魔法つかいプリキュア!」49話での仕事がやはり強く印象に残ります。
あれは人によって評価が分かれがちな作品ですが、波長が合った場合はドハマりする人も多かった。
作画監督は、総作画監督兼キャラクターデザインも兼任している浅沼昭弘さんです。
クロスウォーズでも同じ役職を担当しており、且つテイマーズの頃から作画監督を歴任してきた方ですね。
その確かな仕事ぶりは、昔からのファンになら特に説明するまでもないでしょう。
他にも八島善孝さんや直井正博さん、信美節子さんなどなどお馴染みの名前がズラリと並んでいます。
やはり機微ってものをよくわかってるぶん、スタッフの再招集は必然ってやつなのでしょう。
★キャラなど個別印象
・オープニング
無印の故・和田光司さんが歌っていた「Butter-Fly」から、谷本貴義さんが歌う「未確認飛行船」へチェンジ。
谷本さんもまたデジモンシリーズとは縁の深すぎる方なので、妥当と表現するしかない人選です。
歌い出しにやや遅れて入る例のカットは、無印からのファンにはニヤリとさせられる箇所。
個人的には変えて正解、とまでは言わないけど、変更には肯定的だったりします。
これでより「別物」としてアピールできるし、うまくすれば「今回はこのOPでよかったんだ」ってなりますもの。
歌い手だけ変えて曲はそのまま、って手もないわけじゃなかったでしょうけど。
いっそ氷川きよしさんに歌わせるというのm(以下削除)
曲調的にはオーソドックス、けれど変な捻りはなくて受け入れやすいサウンドだと思います。
作品へのフィット具合では直近だとアプモンもなかなかでしたが、今回はさらにその上をいっているかも。
無印のマイナーチェンジ感が拭えないキャラデザインも、今の感覚で作られたコンテに乗ると味わいが違います。
やはりというか、ヒカリに思わせぶりな演出が多いですね。
サビパートではデジモンたちが縦横無尽に暴れまくり、20年の重みを見せつけてくれます。
非常にカットが早いんでボンヤリ見てると情報量に押し流されますが、ここは特に力が入ってる箇所。
敵デジモンとしてはアロモン、ステゴモン、クワガーモン、ゴーレモンが確認できます。
半数がアーマー体なのは気になりますね。確かにほぼ成熟期へ吸収された感はあるんだけど。
あと気になるのは、無印より太一組メインなカットが多いことですね。
無印はキャラ間のバランスが売りな作風でしたけど、今回はどうなるのでしょう。
ってか、ラスト手前のアレってオメガモンですよね……
ヘタすっと2クール目で出てきかねませんな、コイツぁ。
・八神太一
原点にして最新の主役。21年の時を経て、ふたたび主人公に返り咲いた11歳です。
その溢れんばかりの行動力と度胸は相変わらずで、光子郎に対しては度量の広さもアピールしています。
単なる熱血漢ではない、柔和で冷静な面もある程度以上確保されてる感じでした。
演出の関係上、セリフに頼らない見せ方がされていたのも悪くなかったと思います。
そのぶん無印からのファンとしては、今さら書くことが少なかったりもするんですが。
まあ「太一ってこんなやつだっけ?」的な違和感というほどのもがなかったということですから、
それはそれで良かったと言うべきなのかもしれませんね。
身ひとつでアグモンを助けた場面も、彼ならばやりそうな感じだし。
戦闘では、やはりグレイモンを覆うオーラが紋章と呼応してたっぽいのが気になります。
あれ、単純にグレイモンの能力と断じられるような演出じゃなかったと思います。
もしかしたらアプモンみたく、パートナーからブーストをかけられるんでしょうか?
うまく使えば盛り上げられそうですけど、諸刃の剣かも。
中の人は三瓶由布子さんにバトンタッチ。
太一としては三代目ですが、少年太一としては二代目ということになります。
役として著名なのは「エウレカセブン」のレントンや「BORUTO」のボルトなど少年役が大半で、
「Yes! プリキュア5」の夢原のぞみは少なくとも主役としては例外中の例外。
しかし、そのぶん三瓶さんにしか出せない味が出せていました。最推しプリキュアの一人です。
そんな三瓶さんが演じる太一は低音が強調されたカッコいい系の演技になっており、
あえてこの表現を使わせてもらえばイケメン系寄りになっていたと思います。
故・藤田淑子さんの独特のポジションとは近くて遠く、遠くて近い絶妙な位置につけてますね。
声質的にはよりtri.とラスエボの花江夏樹さんに近づいた、という指摘も見たことがあります。
あるいは花江さんから逆算した面もあるのかな。
・アグモン
最初はコロモンとして戦っていましたが、太一が触れた途端にアグモンの姿になりました。
そのまますぐに太一の目的へ協力し、悪性デジモンの群れへ飛び込んで奮闘しています。
成長期ながらその活躍は目覚ましいばかりで、幼年期レベルでは数がいても相手になりません。
太一と出会う前から、かなりの戦闘経験を積んでいるようにも見えます。
そう、戦い慣れしすぎてる気がするんですね。
太一の名前を知ってるだけならともかく、何をしようとしているのかまで承知していたし。
デジモンにも詳しい感じだし、どこかお兄さんっぽい雰囲気まで漂わせています。
思わず「お前、何周目のアグモンだ…?」などと呟いてしまったほど。
いや待てよ。
ラスエボではあの顛末で、本作で改めて小五太一のパートナーとして登場したわけでしょう?
メタ的に考えれば「あっちでいなくなったのでこっちに来た」とも取れるぞ…?
こっちの太一では初めましてでも、アグモン的にはそうじゃなかったりして…?
なんてことを言われても、新規勢にはわけがわからないことでしょう。
特に何もない可能性だって高いし、万が一そーゆーネタに触れたとしても
「時空を超えた運命で繋がってる」程度の匂わせで終わるあたりが限度じゃないでしょーか。
いや正直何が起こるかわかんないけど。
・グレイモン
アルゴモン成熟期(?)との戦いで現れたアグモンの進化形。
進化バンクは無印に比べてもかなり派手になり、体もちょっとでかくなったような気がします。
格闘においても、巨体をまるで感じさせぬ身軽さであびせ蹴りをかます場面がありました。
やはり既にかなり鍛えられているような……(深読み)
必殺技はお馴染みのメガフレイムですが、普段からボコボコ火球を撃つことができます。
メガフレイムは「最大の力を込めた大火球」という位置付けということになりますね。
実際ビジュアルはギリギリ「火球」のテイを保ってるんですが、受け側の吹っ飛び方だけ見ると
ほぼメガバースト級の演出ですね。劇場版の青いアレにも似たイメージを見て取れます。
尻尾の一撃に始まり的確なガードや上記の蹴りなど、獣らしさを存分に出しつつ
ただの獣にはできない動きもこなしていて、全体に「知性のある獣」感が滲んでました。
無機質なアルゴモン成熟期とは真逆です。しかし相手も知能が低いわけではない。
デジモンの強さと恐ろしさはそこにあるのかもしれません。
・泉光子郎
不動の参謀役ふたたび。ヤマトで言えば真田さんレベルの人です。
無印ではすでに太一と旧知の仲でしたが、今回はこの1話が初対面となります。
このへんも「旧作でやってないことをやろう」という方針の一角なのでしょうね。
過剰なほどの礼儀正しさは、人との距離感を慎重に取っている証。
遠慮なく距離を詰めてくる太一のような人物は本来、苦手なタイプかもしれません。
けれど、この二人がウマの合うコンビなのは無印ファンなら皆が知っていることです。
太一の大らかさを知ってからは、次第に本領を発揮してゆきました。
東京に未知のなにかが起こっていると直感すれば、持ち前の知的好奇心を全開にさせます。
結果、パートナーを得る前からデジヴァイスを手に入れてデジタルワールドの太一に連絡するという
なにげに凄いことをやってのけました。さすがと言うべきでしょうな……
以後は安定の有能っぷりで、的確に太一たちをナビゲートしています。
彼のサポートがなければ、潰すべきポイントを探すのに時間がかかって間に合わなかったかも。
間違いなく、事態の解決に多大な貢献をなした一人といえます。
手持ちの電子端末はノートパソコンからタブレット端末になりました。妥当妥当。
折り畳み式のキーボードがついているところをみると、Surfaceあたりが近そうな感じです。
色が黄色なのは無印の名残ですが、別におかしくはありませんね。
中の人は三代目となる小林由美子さんにバトンタッチ。
「クレヨンしんちゃん」の二代目しんちゃん役に抜擢されたのは記憶に新しいところです。
そのしんちゃんのように、どちらかと言えば少しおバカな役回りが多い印象があるのですけど
「スーパーロボット大戦α」などのリョウト・ヒカワのような線の細い知性派もこなします。
全体の声質的には、天神有海さんや田村睦心さんのキリリとした冷静さから少し離れて
いい意味で子供っぽい愛嬌が加わったように思います。今後に期待したいですね。
・八神ヒカリ
今回は顔見せ程度。セリフも僅かに「うん」だけです。
無印の人間キャラでは再推しのひとりですが、ここへ来てその佇まいが一気に戻ってきた感じ。
たったあれだけの出番でそこまでアピールしてくるとは、さすがにやりますね……
列車の中では、明らかに何かを感じ取っているように見えました。
無印同様、兄よりも先に直感でデジモンの存在を悟っているのかもしれません。
中の人は和多田美咲さんにバトンタッチ… なんですが、本格的な出番はこれからですね。
・八神裕子
「ウォーゲーム」でのマイペースさが印象的だった八神ママ。
本作では渋谷の喧騒に戸惑ったり事件に巻き込まれたりと、慌てた表情が目立つデビューでした。
中の人の園崎未恵さんは、テイルモンの中の人と同じ。
ということは、テイルモンもそう遠くない時期に本格登場するのかもしれません。
・石田ヤマト&ガルルモン
太一に先んじてデジタルワールドに来てたそうです。
どうやら、より太一のライバルとしての立ち位置を強化してゆく方針っぽいですね。
それが吉と出るか凶と出るかは、まだなんとも言えません。
「ヤマトってまあこういうヤツだよね…」的な手応えを得られれば良いのですが。
・空、ミミ、丈、タケル
本編では完全にチラ見せのみで、セリフの類もありませんでした。
なのでOPとEDでの見せ場が主体です。
いずれも概ね無印に沿ったイメージですけど、空だけは姐さん度がアップしてる感じでした。
サビバトルで一瞬映る振り向きカットは、もはや凛々しいとさえ表現できます。
・アルゴモン(幼年期II)
クラモンの変種かと思ったらなんとアルゴモンだったというオチ。
また、アルゴモンがアルカディモンと同じく「固定ルート持ち」であることもわかりました。
ただし、デザイン的にはディアボロモン系の方が近いんですよね。興味深い。
彼らはネットワークになぜか大量発生し、プログラムを狂わせたり首都環状線(なぜか固有名詞は出ず)を
暴走させたりしていました。そのへんに明らかな故意と悪意が感じ取れますね。
どうしてこんなに大量に現れたのかは不明です。何者かが糸を引いているのでしょうか。
個々の強さは大したことがなく、太一でも一、二体は倒せたぐらいです。
コロモンはともかくアグモンには大したダメージを与えられず、ほぼ全滅させられています。
・アルゴモン(成熟期)
最後に残ったアルゴモン(幼年期II)にデータが集中し、二段階進化を遂げた姿。
今回の敵デジモンたちは、デジフロのようにある程度の自力進化ができるようですね。
まあ、コイツらが特殊なのかもしれませんが……
植物ともコードともつかぬ触手と、頭部からの光弾が主武器。
その力はさすがに成長期レベルを遥かに超えており、グレイモンの登場がなければ危ないところでした。
そのグレイモンにはほとんど歯が立たず、メガフレイムで一気呵成に斃されています。
本気を出すと頭部がガバッと開き、グレイモンとは全く種類の違うヤバさをアピールしてました。
率直にキモいというか生理的嫌悪感を醸し出してますね。これもまたモンスターらしさですが。
・エンディング
むやみやたらにヤマトを推しています。
それはもう、「ネタか? ネタなのか?」という意見を耳にしてしまうほどに。
カット切り替えにギターやピックが出たり、実際にギターを携えているカットも有ることから、
本作のヤマトはギターを嗜むっぽいことが判明していたりもします。ブルースハープじゃないのね。
そーいえば、デジフロの輝二も部屋にギターを持っていましたっけ。
ついに来るんでしょーか、ギター持ちのクール担当が。
歌は藤川千愛さんの「悔しさは種」です。
そうは言ってもヤマトの現状と心理、そしてこれからの彼に切り込んだなかなか印象的なEDです。
最近の傾向から、1クールで変わっちゃう可能性も高いんですけどね。
★名(迷)セリフ
「すげえ… オレ、そーゆーの全然ダメでさ。すげえな、お前!」(太一)
光子郎のハートを鷲掴みにしたであろうセリフ。
こんなふうに率直に、他意や気遣いもない賞賛を受けた経験はあまりないのかもしれません。
こーゆーことを無意識に言えちゃう子ではあると思います、太一って。
「やっと会えたね、太一…!」(アグモン)
無印の「太一、待ってた」を多分に意識しているセリフです。
しかし今回はどこか懐かしむような、感慨のこもった言い回しに聞こえてしまいます。
他にも、随所にこの「懐かしさ」を連想させるようなカットがありました。
これは意図的なものなのか、それとも…?
「そして、僕らは遭遇したんです…!
ネットワークの世界に棲息し、活動している生命体に!」(光子郎)
興奮のあまりちょっとポエムが入ってしまった光子郎でした。
スイッチが完全に入っちゃってますね。
「太一さんが駅から消えてしまったあと、僕のところにも突然これが現れて…
それと一緒に、僕のタブレットが、その… すごくなったんです!」(光子郎)
こっちは興奮のあまり語彙が蒸発したパターン。
まあ画面から突然謎のデバイスが現れた挙句に端末がバージョンアップしちゃこうもなるか。
★次回予告
野沢雅子さんのナレーションはどーしてもデジアドというより、テイマーズを思い出させますね。
そして早くもアルゴモン完全体が出てくるようです。
でもって、戦闘メンバーは太一とヤマト。さらに、何かをめっさ意識したサブタイトル。
何かが起きるのでしょうか。これまでの常識を覆すような何かが……
スタートダッシュを飛ばしすぎて息切れしない? だ…大丈夫??